タンパク質は、生命現象を担う「実働部隊」です。遺伝子はあくまで「設計図」であり、遺伝情報をもとに作られるタンパク質の種類や発現の場所、タイミングは細胞の種類や環境によって大きく異なります。さらにタンパク質はリン酸化や糖付加、ユビキチン化、アセチル化などさまざまな翻訳後修飾による機能修飾を受けることで、多彩な生命現象の発露に寄与します。
「設計図」である遺伝子に書かれていないアクシデントもしばしば起こり、生活習慣病、がん、老化関連疾患、自己免疫疾患など、あらゆる疾患の原因になることが知られています。タンパク質そのものを調べてみないと分からないことはたくさんありますが、試験管内で容易に増幅でき、ほぼ均一な構造をもつDNAやRNAと比べて、熱や空気による酸化などで容易に変性・失活してしまうタンパク質を調べるためには、高度な分析技術と知識・経験が不可欠となります。
私たちの研究室では、タンパク質が関わるさまざまな疾患の分子病態の解明を目指して、最新の液体クロマトグラフィー質量分析計 (LC-MS)を用いたタンパク質の網羅的な解析 (プロテオーム解析)手法と、培養細胞株や微生物株などを用いた生化学・細胞生物学的解析などのアプローチを組み合わせて研究を進めています。
1.タンパク質分解系(ユビキチン-プロテアソーム系、オートファジー)の変化による細胞老化機構の研究
2.病原性微生物の薬剤耐性化、細胞毒性、感染過程などに関わるタンパク質の研究
3.がんの血中バイオマーカー候補タンパク質の探索、がんの悪性化に関わるタンパク質の機能解析
※教員と相談の上、新規テーマの立ち上げも可能です。
Orbitrap Exploris 240 (Thermofisher Scientific)