リハビリテーション学部言語聴覚学科4年次に必修科目として履修する「地域参加支援総論」を紹介します。
この授業は2年次後期の「地域参加支援演習Ⅰ」、3年次前期の「地域参加支援演習Ⅱ」の総括となる授業です。
言語聴覚学科では、障がいのある方もない方も、誰もがありのままに活躍できる「共生社会」を目指しています。そして、言語聴覚士の専門性を持ってどのように関わり合っていくか、実践を通して学んでいます。
「地域参加支援総論」では、共生社会(街)を目指し、地域で活躍されている方々をお招きして、更に学びを深めていきます。
今回は、厚生労働省の専門的立場に長く在籍され、「日本ICF協会」を設立された及川惠美子氏による講義とワークショップが行われました。 ※ICF:International Classification of Functionary, Disability and Health(国際生活機能分類)
2001年にWHO(世界保健機関)で採択されました。例えば、歩行が困難で車椅子生活をしている人が、「スーパーで買い物ができない!」原因を想像してみてください。店にエレベーターがない、サポートしてくれる人がいないなど様々な理由が考えられます。しかし、バリアフリーの設備がありサポートしてくれる人がいたとすれば、車椅子の人でも買い物ができます。つまり、車椅子生活であってもそれ自体が障壁とはならないのです。
コミュ二ケーション障害・飲み込みや食べる障害についても同様です。その人が抱える「障がい」だけが問題で何とかしようというのではなく、その人の生活や周囲の環境、ご自身も含め広い視野で「障がい」を捉え、より良い生活を送るためのサポートに繋げようというものです。
1コマ目は、ICFの歴史的背景から概論を学びました。コロナ禍を経て「自由に外出し、移動し、人に会う」ことが人間にとっていかに大切な権利かを再確認しました。
また、超高齢化社会を迎え国の施策も大きく変わりつつあり、「病気や障がいを負った状態」だけをみるのではなく「生きること全体」をみよう、そのためには環境や個人の因子も大切、つまりICFの考え方が重要であるとわかりやすく解説されています。
ICFについては、1年次から学んでおり、2年次、3年次の演習を経て聴く今回の講義は説得力があり、学生達の表情も真剣そのものでした。
2コマ目は、グループに分かれ、事例をとおしてICFの生活機能表に具体的な日常生活を落とし込む作業を行いました。
更に、「日本ICF協会」で開発中の評価システムを体験することができました。評価結果が自動的にグラフとなり可視化されることで内容の過不足がわかり、異職種間でも容易に利用者様(患者様)の全体像を共有することが出来ます。
環境因子の中に「言語聴覚士自身も含まれる」ということに多くの学生が驚いていたのは印象的でした。