⾔語聴覚⼠は、「聞く」「話す」「読む」「書く」といったコミュニケーション機能や、「⾷べる」動作に課題を抱える⽅に対し、最⼤限の機能の獲得あるいは回復のサポートを行い、また、機能の制限が残っても、地域や社会で豊かな⼈⽣が過ごせるよう⽀援する医療専⾨職です。
幼児聴力検査
訪問リハビリテーション
介護予防事業
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機能回復訓練
障害のある⽅への直接的⽀援で、機能低下している部分に直接的に働きかけて、機能回復を図ります。前提として適切な評価が必要です。たとえば、言語障害の原因は、聞こえや、⾔語の中枢や発語器官の障害と多岐にわたっています。それぞれの症状、検査法、訓練法、⽀援の⽅法が違うので、幅広く知識・技術を学んで、患者さんの⽀援にあたります。
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コミュニケーション確保
「ことば」によるコミュニケーションに問題がある方に対して、低下している機能を補ったり、別の残された機能を⽤いてコミュニケーション手段を確保したり、向上させたりします。喉頭を摘出して声の出ない⽅のための⼈⼯喉頭の活⽤、聴覚障害の補聴器や⼈⼯内⽿などがこれに含まれます。こうした機器は、上⼿に使うために練習が必要で、それも含めてのコミュニケーション確保といいます。そのほか、コミュニケーションをとる相⼿の⽅(家族や友⼈など周囲の⽅)のコミュニケーションスキルを上げることも⼤切です。
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⽣活⽀援
コミュニケーションや⾷べることに障害 のある⽅は、⽣活上さまざまな困難があります。機能⾯の改善は限界があることも多く、障害がありながら、より質の⾼い⽣活を送るために、さまざまな⽣活上の⽀援や、⼼理⾯の⽀援を⾏います。
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社会参加⽀援
コミュニケーション障害があると、地域への参加にも困難が⽣じます。⼩児にとっての就学、成⼈の場合の就労や職場復帰などがまず直⾯する問題ですが、さらに、本⼈にとって価値を感じている趣味、スポーツや地域活動などが制限されます。そうしたことを継続できるように⽀援したり、新たな価値を⾒つけるお⼿伝いも⾔語聴覚⼠の仕事です。これらを実現するためには、対象者や家族を直接的に⽀援するだけでなく、受け⼊れる地域や社会に対して働きかけることも⼤事な役割になります。
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摂⾷・嚥下障害の⽀援
⼈が話すときに⽤いる器官は、本来呼吸や⾷事をとるための器官です。これらの器官に異常が⽣じると、話すことと同時に、⾷べること、飲み込むことも損なわれます(摂⾷・嚥下障害)。そこで、⾔語聴覚⼠は、「⾷べる・飲み込む」のリハビリテーションも担当します。⾷べる動作の機能回復だけでなく、制限された範囲で安全に⾷べられる形態の⾷事を提供したり、姿勢や⾷べ⽅の⼯夫で、安全に⾷べられるよう⽀援します。
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発達障害の⽀援
広くコミュニケーションに関して、その年齢で通常到達するレベルに達していない発達障害の⼩児の⽀援をします。発達障害には、知的能⼒の遅れ、対⼈関係の問題、注意や⾏動の問題、読み書きなど特定の能⼒に制限がある場合など多様で、特徴も違うため、⽀援の⽅法も異なります。障害⾃体を改善することは難しいことが多く、能⼒の範囲で⽣活や地域参加が少しでもスムーズにできるようにスキルを⾼める⽀援を⾏います。
医療機関
⼤学病院や総合病院のリハビリテーション科、⽿⿐咽喉科、形成外科、⼩児科、⻭科などのほか、リハビリテーション専⾨病院などが主な勤務先となっています。割合としては少ないですが、⼩規模な診療所(⼩児科、⽿⿐咽喉科、⻭科など)に勤務する⾔語聴覚⼠もいます。
福祉施設
⽼⼈保健施設、特別養護⽼⼈ホームなどの介護保険施設も活躍の場として増えています。施設内で、⼊所の⽅への訓練や、デイサービスの様な通所の⽅への訓練を提供するだけでなく、⾃宅に訪問して在宅⽣活を⽀援する訪問サービスも、重要な仕事として位置づけられます。介護保険施設以外の施設・機関にも⾔語聴覚⼠が活動できる場所が増えています。児童デイサービスや児童発達⽀援センターなどの⼩児の施設に勤務する⾔語聴覚⼠も少しずつ増えています。
教育機関
特別⽀援学校などで発達障害に関する訓練・指導などをしたり、学校で聴覚障害の訓練などを実施している⾔語聴覚⼠もいますが、割合としては多くはありません。ただ、最近は、障害児の教育において、⾔語聴覚⼠と教員との連携が必要という認識が⾼まり、⼩児を担当する⾔語聴覚⼠と教員が連携する機会も増えています。
養成機関
⾔語聴覚⼠を養成する⼤学、短期⼤学、専⾨学校などでも言語聴覚士が教員として活動しています。
開業
いくつかの制約もあり、まだ少ないですが、福祉の枠の中で、デイサービスを運営したり、個⼈で開業のような形で⾔語聴覚障害がある⽅を⽀援をしている⾔語聴覚⼠もいます。
日勤
始業・情報収集・ミーティング
⼀⽇の業務を円滑に⾏えるようにミーティングを⾏います。
⾔語・発話の練習
発語器官の運動を⾏って、筋⼒を回復したり、運動の正確性を⾼めたりします。また、絵カードや⽂字カード、その他の教材を⽤いて、実際に発話をしてもらいながら機能回復を図ります。
嚥下造影検査(X線)
⾷べたものが誤って気管や肺に⼊ってしまう誤嚥が起こっていないか、誤嚥が起こる原因はなにか、どのような訓練で改善するか、⾷事形態など適切な対応はなにかを判断する有効な検査で、診療放射線技師などと連携して⾏います。医師の補助として参加して、時に意⾒を述べます。
⾷事のリハビリ
摂⾷・嚥下障害のある方の毎回の⾷事は、それ⾃体が⼤切な訓練です。 ⾷事の形態や、⾷べる姿勢、⼀⼝の量、噛み⽅、飲み込み⽅などを実際の⾷事場⾯で確認し、難しいところがあれば指導したり、⽅針の変更も⾏います。
休憩
認知機能の検査・練習
注意が散漫になってしまう、感情をうまく表すことができない、物の使い⽅がわからなくなるなどの症状を検査し、必要に応じて訓練を⾏っていきます。脳機能のトレーニングとして、パズルや迷路、計算などに取り組んでもらうこともあります。
カンファレンス
患者さんの希望する⽣活を送ることができるように、多職種間で情報共有し、⽬標達成するための⽅針を話し合います。その患者さんに関わる全ての職種が専⾨性に基づき議論し、対応を共有することで、患者さんにとっての最善のリハビリテーションを⽬指します。
記録記⼊
終業
地域差がありますが、全国的には、まだ⾔語聴覚⼠は不⾜しています。特に地⽅では、⾔語聴覚療法を必要としながら、適切なサービスを受けられない⽅が少なからずいます。絶対的な数の不⾜だけでなく、⾔語聴覚⼠の知名度がまだ低かったり、必要性に対する認識が低かったりと要因はさまざまです。しかし、近年では摂⾷・嚥下障害の⽅や認知症の⽅への⾔語聴覚療法による⽀援の必要性が⾼まり、求⼈は増える傾向にあります。全国的にみても求⼈数よりも求職者が少なく、国家試験に合格した卒業⽣の就職率はどの養成校でもほぼ100%です。
⼀般的に、その地域の公⽴病院の⾔語聴覚⼠の給与が基準になっていることが多いようです。また、病院勤務の⾔語聴覚⼠の給与は理学療法⼠や作業療法⼠と同等で、新卒でおおよそ⽉額23万円程度です。
72.4%
⾔語聴覚⼠に必要とされる適性
コミュニケーションに関⼼があり、コミュニケーションを楽しめる⼈が良いでしょう。ここでのコミュニケーションは、必ずしも「ことば」によるコミュニケーションを指すものではありません。「ことば」を介さなくても、⼈との関わりの中で、相⼿の表情や⾏動、仕草などから対象者の気持ちを推測するようなことも含みます。コミュニケーションに困難が⽣じている患者さんの気持ちを推測できることは、患者さんの⽴場に⽴った⽀援をするためにとても⼤切です。コミュニケーションが苦⼿な⼈にできない仕事ではありませんが、苦⼿意識を持ちながら⾔語聴覚⼠の業務をするのは、本⼈はもちろん、患者さんにも苦痛をともなう恐れがあることを理解してください。また、学修ではアクティブラーニングを積極的に導⼊します。複数の⼈とコミュニケーションを取りながら、⼀つの考えにまとめていくことが求められます。さらに、教員の話を受け⾝で聞くのではなく、⾃分で調べて⾃分でまとめ、⾃分の⾔葉で発表する授業が多いので、⾃ら積極的に学ぶ姿勢が⼤事です。